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Yoshino hiroko | ancient Japanese magic and UPHYCA
吉野裕子的日本古代呪術とUPHYCA の関係

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日本民俗学界の異端と云われる吉野裕子は、日本古代呪術の根幹として陰陽五行説、蛇信仰、そしてオナリ神と女性器信仰を挙げている。

ここでは彼女の学説が如何にしてUPHYCAの世界観に関わるのかを解説するが、ここはあくまでまだ書きかけ。これから数年かけてつめていきたいところである。

陰陽五行説

陰陽五行説とは、中国の古代哲学である陰陽思想が五行思想と結びついたものをいう。

陰陽思想とはふたつの相反する力が離合集散し、五行思想は木火土金水の五つの相が互いに生殺することで世界を構成するという考え方で、日本に伝わった時期はおおよそ7世紀頃とされている。

伝来後は原始日本神話や信仰、様々の土着風習と習合し、絡み合い、急速に日本文化に溶け込んだ。しかし明治維新のおり、福沢諭吉ら近代化の騎手により「真理原則の敵」であり「妄説への惑溺」であると切り捨てられたことにより学問の表舞台からは徹底的に排除されることとなる。

この思想を再度日本古代信仰理解のために復権し隠された理論を読み解こうと試みるのが吉野裕子である。

私が十数年前に現代縄文魔女術の源となる世界観を受け取った際は、まだ陰陽五行の「い」の字も知らぬていたらくであったが、結成からしばらく経ちふと見渡せば、陰陽五行説と私たちの物語は当たり前のように不思議と結び合っていることに気づかされる。

たとえば奔放の参入儀式の情景を見てみよう。

貴女は家の中で雨が降っているのを感じる。

雷が鳴っている。

駆け出す貴女は躍動の最中、山の頂に立つ。

そこで身に受けた雷から火を受け、うつわとなる。

これを五行の相剋に当てはめれば、まず家の中とは巣の中、穴の中、最も窪んだ暗い場所であり水である。そこから雨の音を聞いている。雨はもちろん水である。水は木を生む。木は動くもの、振動するものであるから、雷は木である。重ねられた水の象徴により雷は益々勢いを増してゆく。

貴女は雷に触発され、家を飛び出す。

木行は振動、蠢き、音である。

木そのものとなり奔走する貴方は山の上にたつ。

これは土である山を木である貴女が剋した状態である。

そこで自身の名を宣り(声の振動すなわち木)その身に雷(木)をうつわ(金)に降ろし、火が燃え上がる。火は全てを燃やし尽くしてしまいそうであるが、そうはならない。

極限まで極まった木をうつわ=金(金剋木)が統制することで、そこに聖なる火が灯るのである。

火は土を生む。土は人を表す。

火は人の母であるというが、この儀式を通して、女神は貴女の母となる。

また三合と呼ばれる五行のきざし、さかり、なごりの相にてらすなら、奔放は木の火である春の寅、蠱惑は火の火である夏の午、創造は土の火である秋の戌にあたる。

 

 

 

 

オナリ神、女性器信仰

オナリ神とは血縁関係にある女姉妹が男兄弟の守り神になるという沖縄の土着信仰である。オナリに対して男はエケリと呼ばれるが、霊力は圧倒的にオナリが優位とされている。遠くへ旅立つとき、男は自身のオナリから手さじ(手拭い)を受け取り、これをお守りとして身に携える。これに似た風習がインドネシアにも見られ、姉妹の織った布を旅の守りとし、また彼女のはじめて織り上げた織物は兄弟の死装束になるという。

血縁女性からの授かり物に霊力の宿る例は日本神話にもあり、有名なのはヤマトタケルとヤマトヒメである。ヤマトタケルは数度にわたり、ヤマトヒメから装束や剣、火打石を授かっている。

邪馬台国の卑弥呼は弟とヒメヒコ制で国を統べていた。ヒメヒコ制とは古代日本の伝統であったと言われており、神事を女、政(まつりごと)を男が担う。伊勢の斎宮、琉球の聞得大君がそれである。彼女らは時の王の血縁女性から選ばれ、王自身、ひいてはそのものの統べる国を霊的に守護する役割を担う。

また古く「女は戦の魁」と言われ、戦線の最前線に女を立たせ、女性器の露出と眼力で相手を打ち負かす描写が日本神話にも登場する。アメノウズメと猿田彦の対面のシーンである。アメノウズメといえば天岩戸隠れにて伏せた桶を打ち鳴らし(木)、火門(火)をあらわに踊り、天照(火)の出現を願った巫女神である。

戦争状態における敵の排除、籠りの最中にある日(火)の女神の目覚め両方に彼女の火門が登場するのは、女性器のもつ「出して入れる」「入れて出す」つまりむすびとほどきの魔力によるものであると吉野裕子は解く。

古い集落の入り口に道祖神つまり男根が祀られているのも、この力を作用させるためのものであるという。集落を子宮、入り口を火門に見立てたうえでそこに男性器を置くことで、良きものは招き入れ悪しき物は排除するという意図を込めた。そしてこの出入をはやし、しずめる呪具こそが箒=蛇なのである。

女性器に宿る大いなるむすびとほどきの魔力、これこそUPHYCAが参加者を女性のみに限定している最たる理由の一つである。

このような吉野裕子の視点は今後の現代縄文魔女術の世界観熟成に欠かせないものであり、今後のより積極的な探求を目標にしている。

また同時に陰陽五行伝来以前の、吉野裕子の視点に立てば蛇神信仰、南方由来神話、信仰、風習を縄文土器や続縄文文化、そして環太平洋火山帯の無文字文化にも、私たちが掘り起こし再編すべき神話の断片が多く眠っているはずである。この分野に関心のある巫女がいるならば、是非共に探究に励んで貰いたい。

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