Mariko
Middleton

All Material is sourced from UPHYCA
The Three Himehiko | ひめひこ三組
UPHYCAにはお祀りしている三組の『ひめひこ』がいます。
一組目は、『みなもとのはは』と『たまわりみこ』でUPHYCAの神話の軸となる『ひめひこ』です。この名は都合上の呼び名であり真名は秘されています。『みなもとのはは』は神話の中で語られ、『たまわりみこ』は物質を伴った姿で巫女の家々を一年ずつ放浪します。一年間『たまわりみこ』を預かる巫女は『御神体番』と呼ばれます。UPHYCAの巫女たちの使う『おしるしさま』と呼ばれる図は、この『たまわりみこ』の似姿です。この『ひめひこ』は呼び名の通り、巫女にとっての母と、母から託された大切な預かり物で、過去を象徴します。
二組目は、『にしのひめひこ』です。この『ひめひこ』はUPHYCA結成直後に誕生した太平洋沖の新島、西之島の土地の神々です。ここはUPHYCAの巫女にとって非常に重要な、多重構造的聖地です。西之島はウフィカ結成直後のある水曜日にうまれた小笠原諸島の新島です。正しくは、西之島というちいさな火山島が40年ぶりの噴火によって新たな陸地を産み、その後新旧が融合して一つの大きな島となりました。2013年時点では、一時的に陸地ができたとしてもすぐに消滅するだろうと目されていましたが、継続的な噴火と溶岩流出により、2015年までには旧西之島を完全に飲み込むようにして融合し、面積は十倍となりました。2016年には噴火が落ち着き、上陸調査が開始されました。同じような火山性の新島は他にも見られますが、西之島新島のように本州から1000キロ、最も近い島からも150キロというように完全に孤立した新島は大変珍しく、「人間活動の影響を受けずに生態系ができる過程をみられる唯一の場所」として世界的に注目されています。いまはカツオドリが運ぶ虫と少しの植物が茂るのみのこの島ですが、3万年後には独自の生態系をもつ命豊かな島になると目されています。UPHYCAの巫女は3万年後、どうぞこの地に命がみちますようにと日々祈ります。
この『ひめひこ』は巫女にとって、守るべき愛でるべき子供達であり、未来を象徴しています。
三組目は、『すなたまししむらゆかりのひめひこ』です。この長い名前には「すな」「たま」「ししむら」と三つの言葉が合わさっています。
この『ひめひこ』は上記の二組とは違い、それぞれの巫女によって祈る対象が異なります。というのもまず「すな」とは土地のことであり、それぞれの巫女が暮らしたり生まれ育ったり、または特別に結びつきを感じている場そのものの『ひめひこ』を表しています。次に「たま」とは巫女が特別に影響を受けた思想や文化などの知識や情報のことを指します。知や志の『ひめひこ』のことです。最後に「ししむら」とは肉体のことで、自身の肉体の祖霊と子孫の『ひめひこ』です。実の父母に連なるはるか以前の全ての父母、そして場合によっては配偶者や縁者の先に連なる全ての祖霊も含みます。
私を例に挙げるなら、「すなのひめひこ」は日本という土地の神々と、和歌山、特に今は浜辺に暮らしていますから、この浜のひめひこにも呼びかけます。「たまのひめひこ」は間違いなく現代魔女術の男女神でしょう。そして「すなたまししむら」は谷崎家の父方母方両方と配偶者の一族、そしてまだ見ぬ子供達の未来の縁者全て、ということになります。
UPHYCAはオンライン上のコミュニケーションを前提とした集いであるため、必然的に住む場所も文化も違う多種多様な巫女が集っています。それぞれの巫女が、自分自身のどの縁も取りこぼさぬよう、また既存の宗教や文化を粗末にせずとうとみ、そして巫女同士がそれぞれ異なる『すなたまししむらゆかりのひめひこ』を互いにとほぎ合うことは、とても大切で価値あることであると考えています。この『ひめひこ』は巫女にとって、現在を象徴しています。
UPHYCAの巫女が肉体の死を迎えたら、まずは巫女自身が『すなたまししむらゆかりのひめひこ』となって行うべきことを済ませます。『すなのひめひこ』として土地の守り手となることもあれば、後世に残した創作物を媒介して誰かの『たまのひめひこ』になることもあるでしょう。もしくは残してきた近しい人々を見守る『ししむらのひめひこ』となる巫女もいるでしょう。そのどれもが、とうとい行いです。『ゆかりのひめひこ』としての役割を全うした巫女は『けもの』を呼びます。巫女は『けもの』とともに西之島へと向かい『にしのひめひこ』の巡りの一部になり、そして最後は『みなもとのはは』へと溶けてゆきます。


